神戸地方裁判所 昭和55年(ワ)1267号 判決
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【判旨】
2 被告は、本件賃貸借の目的が普通建物を所有するものであつた旨主張するので、検討する。
<証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。
(一) 被告は、かねて自動車運送業を営んでいたが、昭和四五年六月ごろ、大出一俊を介し、原告に対し、空地であつた本件土地を、そのまま自動車置場として借り受けたい旨を申し入れた。
(二) 原告は、これを承諾し、昭和四五年六月一日、被告に対し本件土地を、自動車置場として使用する目的で、期間昭和四七年五月三一日まで、資料一か月七万九〇〇〇円の約定で、賃貸する旨の契約を締結し、右契約に関する土地賃貸借契約書(甲第一号証)を作成したが、同契約書にも、使用目的として「車庫のみの目的」と記載されていた(賃料が右のように約定されたことは、当事者間に争いがない。)。
(三) 被告は、本件土地の賃借後、同土地を自動車置場として使用してきたが、昭和四五年八月一日ごろ、大出一俊を介し、原告に対し、自動車運転者の仮眠室等のある組立式の事務所用建物を本件土地上に建築したい旨を申し入れ、原告の承諾を得て、そのころ本件土地の西側の約三分の一に相当する部分上に本件建物を建築した。
(四) 本件建物は、その三分の一程度については基礎工事が施行されているが、その余の部分については基礎工事が施行されず、ボルト締めの組立式のプレハブ二階建建物であり、その一階に事務所が設けられ、その二階に自動車運転者等の更衣室及び仮眠室各二室が設けられ、附属建物として便所及び物置が設けられている。
(五) 原告は、被告との間で、当初の約定期間満了の日である昭和四七年五月三一日、期間昭和四九年五月三一日まで、賃料一か月九万二〇〇〇円と約定して賃貸借契約を更新し、次いで、右期間満了の日である昭和四九年五月三一日、期間昭和五一年五月三一日まで、賃料一か月一一万五〇〇〇円と約定して賃貸借契約を更新し、右期間満了の日である昭和五一年五月三一日、期間昭和五三年五月三一日まで、賃料一か月一五万円と約定して賃貸借契約を更新した(右各賃料が右のように約定されたことは、当事者間に争いがない。)。
なお、この間、原告と被告との間においては、権利金等の授受は全くされなかつた。
右のような事実が認められ、被告代表者尋間の結果のうち、右認定に反する部分は、証人大出一俊の証言に照らして、たやすく信用できず、前掲甲第二ないし第四号証(いずれも土地賃貸借契約書)のうち、本件土地の使用目的が普通建物所有であるとの各記載部分は、証人大出一俊の証言によつても明らかなように、本件土地についての賃貸借契約更新の際に市販の契約書を利用した作成された土地賃貸借契約書の一部分であるところ、使用目的が右のように印刷されたものであつたのを訂正することが失念されたため、右のように記載されているにすぎず、的確な証拠ということはできず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。
3 ところで、借地法第一条所定の「建物ノ所有ヲ目的トスル」とは、土地賃貸借の主たる目的が借地人においてその土地上に建物を建築してこれを所有することにある場合をいうのであり、借地人においてその土地上に事業のために必要な事務所等の建物を建築して所有する場合であつても、それが賃貸借の主たる目的ではなく、その従たる目的にすぎないときは、建物所有を目的とする土地賃貸借に該当しないものと解するのが相当である。
そして、これを本件についてみるのに、前記2に認定の事実によれば、本件賃貸借の主たる目的が本件土地をそのまま自動車置場として使用するものであることは明らかであり、ただ、その自動車置場の機能を果たすため、附属施設として、自動車運転者の仮眠室等を有する組立式の事務所用建物である本件建物が本件土地上に設置されているにすぎず、このために、本件賃貸借の主たる目的が建物所有を目的とするものとはいえないから、本件賃貸借については、借地法の規定は適用されないものというべきである。
(佐藤栄一)